京極夏彦「数えずの井戸」

本を読んだり映画を見たりというのは大好きですが、昔から記憶力には自信が無く、過去に読んだ本や観た映画も、面白かったつまらなかったという大雑把な印象だけで肝心のストーリーを忘れてしまっているということが多くあります。
人生も折り返し地点を過ぎると、「残りの時間」を意識するようになるわけで、同じ映画を何度も観たりする時間がもったいないと考えるようになりました。
そこで、少しでも記憶にとどめる為に、この日記で簡単に感想をしたためて行こうと思います。

というわけで、まずはお正月に読み終わった小説、京極夏彦氏の「数えずの井戸」。言わずと知れた「嗤う伊右衛門」「覘き小平次」に続く江戸怪談シリーズ第3弾です。

このシリーズはクリストファー・ノーラン監督の「バットマン」シリーズに通じる、リアルな面白さがあります。
この作品に限りませんが、京極氏の作品に登場する江戸時代の人物たちの話し言葉はリズムがあって良いですね。ついつい読み進めてしまいます。


内容の方はといいますと、屋敷、古井戸、皿を中心に、心に闇を抱えた登場人物たちの心情が、各人物の視点で淡々と語られていく群像劇になっています。それぞれのすれ違いが重なって、あれよあれよと破滅へ向けて加速していく様は大変読み応えがあるのですが、最後はすべてを語るのではなく、余韻を残す終わり方になっています。
好き嫌いが分かれるところとは思いますが、私は、「あれ?これで終わり?」的な印象を持ってしまいました。